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Early Days

 タイトル通り、初期の音源をまとめたもの。下手クソながらやる気と勢いを感じさせるものが多く、また、曲間にメンバー間の会話が聞こえる箇所が多数あり、当時の雰囲気がよく分かる。
 ジャケットデザインは、1st ライブ時の写真をPhotoshopで加工したもの。ロゴとタイトルのピンクは吉田のメインギターであるアリアプロのボディカラー。高坂 のフェルナンデスは白、右後ろに見えるシャーベルのギターは北世のもの。

1. Early Days(高坂作)
Key 高坂
1997.2.23. カルミアアネックス(四街道)

 1989年〜1990年3月にかけて、高坂 が住んでいたボロアパートで録音された断片的な音源を「Sound Edit 16」というソフトでコラージュしたもの。キーボードはこの時期のライブでも使用した KAWAI のK1II 。再三出て来るフレーズはRATIUG最初期のレパートリー「Boy (Running Wild)」のギターソロのフレーズ。吉田とお互いのアパートでツインハーモニーの練習をよくした。その他、1989年に吉田にオリジナル曲として聴かせ、「アイドルの曲みたいだ」と却下された際の音源も出て来る。

2. Mama Kin(オリジナル:Aerosmith)
Vo 佐知ねえ LG 吉田 G2 高坂 B 浅妻 Dr 牧
1989.12.21. YAMAHA LM Studio(池袋)

 RATIUG で最も古い音源は、このメンバーで2度目に集まった際の音(初回は四谷音楽館だった)。録音はウォークマンのマイクによるもので、120分のカセットテープでずっと録音しっぱなしにしていた。そのため、大きな音ではコンプレッサーがかかりすぎ、同じ音でも大きく録れたり小さくなったりしてやや違和感がある。
 この曲は1989年8月の結成以来のトレードマーク的な1曲で、元々は8月の結成時のメンバー・赤堀がそれ以前のバンドでライブ演奏していたところから来ている。アレンジは Guns'N Roses のバージョンを参考にしているが、細部がいい加減だったり、音や展開を間違ったまま覚えている箇所もある。初顔合わせで緊張感のある中、佐知ねえ・牧は健闘しているものの、ギター2人とベースはグチャグチャ感を演出するのみ。レパートリーの中では「一番簡単な曲」と認識されていたが、あまりの下手クソ具合に思わず牧が「これ意外と難しかったりして」と苦笑している。

3. Here I Go Again(オリジナル:Whitesnake)
Vo 佐知ねえ LG 高坂 G2 吉田 B 浅妻 Dr 牧 Key 高坂
1989.12.21. YAMAHA LM Studio(池袋)

 初期レパートリーの一つながらライブでは一度も演奏されたことがない曲。YAMAHA LM Studio 備え付けの大きなキーボードでのイントロは 高坂 によるもの。佐知ねえはこのオルガンパート終盤の盛り上がりに大変苦労して、この音源でも「あぁ、出来ないよ〜」が聞こえる。このパートの背後で吉田が弾いているギターは、半年ほど前に 高坂 が購入した Adrian Vandenberg の教則ビデオで紹介されていたフレーズ(ちなみに吉田は Vivian Campbell の教則を買った。ギタースタイルも Adrian と Vivian を目指していた部分もある)。
 エンディングで佐知ねえがハーモニーパートを歌い出すが、それを聴いた吉田が「この位の高さのメロディの方があっているようだ」と指摘したのをキッカケに、本来のパートを吉田・高坂で歌う案、ひいてはハーモニーを入れる案に発展していく。

4. Future Wold(オリジナル:Helloween)
Vo 佐知ねえ LG 高坂 LG 吉田 B 浅妻 Dr 牧
1989.12.21. YAMAHA LM Studio(池袋)

 この曲も初期レーパートリーの格の一つ。リズムのコンビネーションがいまいち。佐知ねえのキーと合っているようで、生き生きと歌える。ギター2人も、本来 RATIUG とはこのようなツインリード主体であるべきと考えていたが、実際はなかなか難しかった。ツインリードだが、バッキングでは、多少手数が多い方が 高坂 だが、ソロの直後からは吉田の方が手数が多い。イントロでは Helloween がライブでやるフレーズ(グリーグの『ペール・ギュント』の「山の魔王の宮殿にて」のフレーズ)を加えている。先が吉田で途中から入るのが 高坂 。

5. Hold On(オリジナル:Yngwie Malmsteen)
Vo 佐知ねえ LG 高坂 G2 吉田 B 浅妻 Dr 牧
1990.1.11. YAMAHA LM Studio(池袋)

 当時、早弾き王・Yngwie の影響は絶大で、高坂、吉田ともに絶大な影響を受けている。難関な曲が多い中、ミドルテンポであることと、バッキングでツインハーモニーが出て来るということで 高坂 が選曲。その気で弾いているものの、やはりソロ等はかなり厳しい。後に加入する山口・北世に「ムードもリズムも余裕も感じられない」と酷評された 高坂は、4月から9月にかけてスローなフレーズに色をつける猛練習をすることになる。
 気持ちばかりで難ありのギターに対し、相当健闘しているのが佐知ねえの歌。ここまでの数曲だけでも、最もバンドに貢献しているのが佐知ねえであることが示されている好例といえるだろう。演奏の拙さから歌の良さが強調されて聴こえるのか、思わず惚れてしまいそうになるほど素晴らしい出来だ。

6. I Want Out(オリジナル:Helloween)
Vo 佐知ねえ LG 高坂 G2 吉田 B 浅妻 Dr 牧
1990.1.11. YAMAHA LM Studio(池袋)

 「Hold On」に続いて間髪入れずに演奏される。ツインギター・バンドとしてモデルにしていた Helloween の曲だが、ツインギターらしいのは少し不思議な感じがするイントロとソロの後半の少しだけ。これは典型的ツインギターのレベルにはまだまだ及ばないが、ツインギター・バンドらしくするための苦肉の策。そのイントロもギター2本の音色が違いすぎるせいか、まったくキレイにハモれていない。
 この曲でも佐知ねえが健闘しており、キーが高めの Michael Kiske に合うようだ。「Hold On」といい、この曲といい、ギター中心の考えでの選曲だが、実際は佐知ねえのための曲のようだ。ソロの後のパートの「No, no...」の部分は少し照れながらの吉田の声。

7. Guitar Solo
LG 高坂 LG 吉田
1990.2.1. YAMAHA LM Studio(池袋)

 「Hold On」のエンディング・ソロから、そのまま単独のギター・ソロ・タイムとなる。プロのライブのような感覚でギター2人がやってみたかったことなのだが、当然、それ以外のメンバーには退屈。「一度だけやらせて。その間、静かに待ってて」と、ほとんど録音のための演奏として実行したが、やはり牧が待っていられなくなり、ずっと後ろでドラムの音がしている。
 ソロの内容は、最初が 高坂 で、Adrian Vandenberg 風のフレーズから、バッハの「トッカータ&フーガ」のフレーズをライトハンドで弾くところまで。繰り返しの部分でスイッチするのは吉田のアイディア。このソロ・タイムに大乗り気だった吉田のソロは、主に「Tribute」での Randy Rhoads 風のフレーズで、高坂 よりも長めにプレイする。いまいち弾けていない 高坂 よりも普段の練習の成果が出ているようだ。どこかでハーモニーもやりたいと話していたが、実現はしていない。

8. Heaven Tonight(オリジナル:Yngwie Malmsteen)
Vo 佐知ねえ LG 吉田 B 高坂 Dr 牧 Key 高坂
1990.2.8. YAMAHA LM Studio(池袋)

 本格的なコーラスに吉田と 高坂 が挑戦した。元々ハーモニーで始まる曲だけに、コーラスは無視出来ないと考えたのだが、演奏以上に下手クソ。しかし佐知ねえは嫌な顔一つせずに好意的に受け止めてくれた。また、この曲は 高坂 がまったくギターを弾かずに、キーボードに専念する唯一の曲でもある。
 この曲のベースは 高坂 が数日後に自宅アパートのMTRでオーバーダビングしたもの。浅妻が1月いっぱいで脱退したためで、以降、スタジオではベース不在での演奏となる。初ライブを行う話しもちらほら出初めていたものの無期延期に。2月1日には吉田の級友でフュージョン・ベースが得意という太田が助っ人で来てくれたが、あまり乗り気ではないようで、ベース不在となってしまった。
 演奏前に佐知ねえがふざけているのはこの日の別の曲の前で、「すみません。ごめんなさい」と言っているのは、ふざけていたからではない。この日初コーラスの 高坂 がマイクに手間取り、牧のカウントに入れなかったのを、佐知ねえが自分のミスと勘違いして謝っているもの。かすかに聞こえる 高坂 の「あぁ」というのは、自分のミスに対し「いいから、次」というニュアンスで出したもの。
 また、佐知ねえが曲の終わり方に違和感を持って困惑している様子が分かるが、このアレンジは Yngwie のライブバージョンのアレンジを真似したもの。

9. Future Wold(オリジナル:Helloween)
Vo 佐知ねえ LG 高坂 LG 吉田 B 高坂 Dr 牧
1990.2.8. YAMAHA LM Studio(池袋)

 12月の時と違うのは、吉田のコーラスが入ったことと、ギターが多少上達し、イントロがすぐに始まること、ベースが 高坂 のダビングになっていること。高坂 は浅妻のベースを気に入っていなかった割に、この曲のベースでは浅妻と同じ4分打ちで弾いるなど浅妻の影響が見られる。終盤のベースソロのような1小節は更なるオーバーダブ。ギターに関して、12月と比較し最大の効果を発揮したのは、吉田のフランジャー。2回目のAメロの背後で聞こえるもの(高坂 は1回目、2回目ともAメロ部は休符)だが、BOSS の「スーパーフェイザー」の音だ。その他、ソロのハーモニーが以前よりもやや改善され、ソロの終盤の 高坂 にしては珍しい早いタッピング・フレーズもだいぶスムーズになった。

10. Seven Doors Hotel(オリジナル:Europe)
Vo 佐知ねえ LG 吉田 LG 高坂 B 高坂 Dr 牧 Key 高坂
1990.2.15. YAMAHA LM Studio(池袋)

 佐知ねえと 高坂 の好みによる選曲。イントロは、オリジナルはピアノだが、ここでは YAMA LM Studio のキーボードのによるオルガンサウンド。キーボードはそれのみ。この曲のアレンジは RATIUG が目指すべき理想のスタイルの1曲といえる。それは、メロディアスで疾走感のある楽曲、ツインリード、1人のソロ、バッキングギターは2人が同じフレーズを弾く箇所がほとんどない、というあたり。疾走感という点では、この録音では次第にテンポが遅くなっていくのであまり感じられないが・・・。
 ギターについて、繰り返しの間の短いソロ・パートが3回出て来るが、吉田、高坂、吉田の順、間奏の掛け合いソロは、吉田、高坂、吉田、高坂の順。また、間奏やイントロのツイン・パートは、主旋律が 高坂 、高いハーモニーが吉田になっている。他の曲と最も違うのはバッキングで、例えば出だしのEmを、吉田が一般的な1度5度で弾けば、高坂 は1度3度で弾く、Bの部分では 高坂 が3度5度を弾くという具合に、全般を通して3度の音を強調いるので、とても調感のある演奏になった。

11. Here I Go Again(オリジナル:Whitesnake)
Vo 佐知ねえ LG 高坂 G2 吉田 B 高坂 Dr 牧 Key 高坂
1990.2.15. YAMAHA LM Studio(池袋)

 当時、高坂 はイントロのキーボード・パートの途中のEm以降の部分をよく間違えていた。とてもシンプルなパートで余裕があるせいか、Whitesnake のライブで Adrian が弾くヴォイシングを意識したり、多少のオカズを入れたりすることに気がいくと、ややコードチェンジが多い部分で混乱してしまうからだ。演奏前に「もう間違えないよ」と言ってから弾き出す演奏は、やや緊張感があり余裕のない演奏。極力シンプルにして遊びを入れないようにした演奏。12月に「出来ない」と嘆いていた佐知ねえのヴォーカルもサラリとした歌い方で突破し、全体的なアンサンブルも向上が見られる。

12. Livin' On A Prayer(オリジナル:Bon Jovi)
Vo 佐知ねえ G 高坂 Dr 吉田
1990.2.22. YAMAHA LM Studio(池袋)

 後任ベーシストが見つからず、代わり映えのしない活動から、次第にバンドも散漫になっていく様子が伺える。お遊びタイムが増える中での1曲(1曲というほどの完成度にはほど遠いが)。吉田が適当なテンポで8ビートを刻み、それに合わせて 高坂 と佐知ねえが入るだけ。終盤で 高坂 が弾いているフレーズは「You Give Love A Bad Name」。Bon Jovi つながりで弾けばそのままメドレーになるかと考えたが、誰にも気付かれずに終了。

13. Never Say Never(オリジナル:Triumph)
Vo 佐知ねえ G 高坂 Dr 吉田
1990.3.8. YAMAHA LM Studio(池袋)

 前曲に続き、これもお遊びタイムの1曲。高坂 が前奏である「Prologue: Into The Forever」を弾き、そのまま本編に入っている。この曲の演奏はこの日の1回だけだったが、手応えを感じた 高坂 はその後の第3期 RATIUG でこの曲を復活させ、ライブでも演奏された。

14. Cold Morning(高坂作)
G 高坂
1990.3. 田島荘(千早町2丁目)

 オリジナル曲制作のためにMTRで 高坂 が録音したデモだが、出来がいまいちのためにお蔵入りされ、吉田にすら聞かせなかった曲。ギター2本とドラムマシーン(BOSSの Dr.Rhythm DR-220A)で録音されていて、途中で間違えても修正もしていないかなり粗い録音。曲名は、当時働いていた新聞配達中の早朝に考えた曲だからというだけだが、それはおそらく2月中のことだろう。
 イントロは Helloween の「Star Light」のイントロのリズムを拝借。最も力を入れたソロパートは次々のコードが変わるクラシック音楽の影響(Yngwie の影響でもある)から。逆に力を入れていないパートはあまりにつまらない。後に 高坂 が加入するPARAのメンバーには聴かせたがあえなくボツになった。

15. Is This Love〜Ride The Sky(オリジナル:Survivor/Helloween)
Vo 佐知ねえ G 高坂 Dr 牧 Key 佐知ねえ
1990.3.15. YAMAHA LM Studio(池袋)
 前日にスタジオライブ的な初の試みを行った。吉田の知り合い数人を YAMAHA LM Studio の一番広い部屋に招いて持ち曲を披露した。高坂 はお褒めの言葉を頂いたが、バンドの評価は低かったようで全然嬉しくなかった。
 さて、前半の「Is This Love」は佐知ねえのキーボード練習的な部分のみ。歌も他の楽器もない。
 続く「Ride The Sky」はスラッシュメタル的な曲でバンドに合わないが、だからこそのお遊び。佐知ねえの無理矢理ヴォーカルを聞き爆笑で終わる。牧がリズムの違いを説明している声も聞こえる。

16. Shot In The Dark(オリジナル:Ozzy Osbourne)
Vo 佐知ねえ G 高坂 Dr 牧
1990.3.22. YAMAHA LM Studio(池袋)
 相変わらずのお遊びタイム。佐知ねえ推薦の曲で、後に高坂 が大好きになる曲だが、この時点ではまだ理解度はかなり低い。変則チューニングの Jake E. Lee のプレイをレギュラーチューニングで真似たプレイをしようとしているが、お粗末な限り。高坂 がこの曲を好きになるのは翌年の Zakk Wylde の解釈を聴いてからだが、それもこの時の低レベルの理解が先にあったからこそZakkバージョンのカッコ良さに気がついたと思う。


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