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Street Junk Express

 Dark Side Moon が活動を停止し、暇を持て余した 高坂 が新バンド結成に動いた。『Player』誌のメンバー募集記事を見て、良さそうな人に声をかけたのだ。その相手は女性の Ash。独学で英語を覚え、ピアノが弾け、空手有段者という異色の存在。曲も作るという。Dark Side Moon がヴォーカルで苦労したことからも、初めにヴォーカルと曲作りの出来るバンドの核を作ろうというのが狙いだ。
 何度か電話で話し、Ash の作る曲の断片を聞かせてもらい、それを基に 高坂 がデモテープを作成。ドラムマシンとギターとベースのラフなものだが、曲の雰囲気は分かるものだ。Ash の作った断片をまとめてアレンジし、高坂 がサビの部分とソロを足して仕上げた感じで、明るい曲調のハードポップといった感じだ。この曲ともう1曲を作って、スタジオ・イン。音出しと初顔合わせだ。一応レパートリーとして Ash の選曲で Mott the Hoople の「All The Young Dudes」と Iggy Pop の「Search and Destroy」も用意した。
 Ash は実にサバサバした性格の男っぽい雰囲気の女性で、ラフなTシャツ姿もワイルドさを醸し出していた。高坂 のギタープレイも気に入られ、バンド名は Ash の考えた Street Junk Express に決まり、他のメンバー探しと曲作りを並行して行っていくことに決まった。
 ほどなく第3のメンバーが決まった。Alley。高坂 より1つ上の男性で Ash が見つけてきた人物。なんと本業はウッドベースだという。早速2度目のスタジオ入りで顔合わせ。Alley は見た目は長身(高坂 と同じくらいだが)で荒くれ者で近寄り難いような風貌だが、心が優しく良く気がつくナイスガイ。持ち運びが大変なので普通のベースを持って来ていて、ドラムマシンに合わせて音合わせをした。Ash と Alley も気が合うようで、すべて順調な滑り出し。
 しかし、良かったのはここまで。3回目のスタジオでは、Alley の音がデカすぎの上、歪ませているために Ash のヴォーカルと音域が重なってしまい、ヴォーカルが聴こえない。もともとヴォーカルとギターがかぶっているのに、それに加えベースも乗ってくるとなると音がグチャグチャ。それを指摘し、修正を試みてもほとんど変わらず、更には Alley は音楽の知識がほとんどないことも発覚。バンド経験は豊富なようだが、曲作りではコードも分からないので何の貢献も出来ず、高坂 は説明するのに手いっぱいになってしまい、曲に入り込めず。一方、Ash は、音楽の才は未知数ながら、バンド経験に乏しく、Alley と 高坂 のコンビネーションの悪さが分からず困っている状態に。3度目のスタジオ入りの後、高坂 のやる気が急激に落ちてしまった。しかも4度目のスタジオの数日前に 高坂 が風邪で寝込んでしまいスタジオは急遽取り止め。高坂 だけ千葉県習志野市に住んでいたのだが、寝込んでいるところへ Ash と Alley がハイテンションで乗り込んで来て、またウンザリ。丁重にお断りして帰ってもらったが、これを境にバンドは消滅へと向かってしまった。Ash とはうまくやれそうだったし、Alley もいいヤツだったので残念な結末になってしまい、高坂 としても悲しかった。
 Ash と Alley は2人での活動も考えたようだが、うまくいかなかったようだ。Ash が書いた歌詞の草案のアイディアはどこかへ散逸してしまった。デモ音源の2曲だけで、リハーサルの音は残っていない。

1. Nothin' But Rock
1996.初頭
 高坂 作のデモ音源。ほとんど Black Sabbath の「Sweet Leaf」のような曲。高坂 はアドリブ満載の曲を狙っていた。タイトルのみ Ash がつけたもので、ボーカル・ラインや歌詞も考えていたようだが、完成しなかった。ボーカルが乗ればもう少し Sabbath っぽさは薄れたはずだ。

2. Lonesome Beat Club House
1996.初頭
 Ash 作のデモに、高坂 がサビとソロを加えて音源化したもの。メロディ・ラインも 高坂 が歌っているが、テープ速度を遅くしてキーを下げて歌ったものを元のスピードに戻している。Ash はこのデモをたいそう気に入り、バンドの未来が見えるようで 高坂 と2人で喜んだものだった。スタジオ・リハーサルでも多少は試したが、Alley が覚えておらずギターとボーカルだけではいまいちだった。


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