Minstrel's Live
Impression

=演奏のみ
=歌、それにコーラスも
=パフォーマンスやステージセット
=PAや会場の音響(席の位置にもよるが)
=客のノリや雰囲気、マナー

評価はA〜Eの5段階で、とんでもなくスゴかった時は
S(Special)と表示される(かなり辛口です)

<1986-1999編へ>

Mr.Big (2023/日本武道館)
演S 歌A 見A 音B 客A

 『The BIG Finish Farewall Tour』銘打たれた日本公演最終日。個人的に、ロック・コンサートは18年ぶり、Mr.Bigは27年ぶり!だ。娘と2人で出掛けるのは二度目。デビューから34年、Mr.Bigに最後の時が来た。Eric曰く「悲しいけど、悲しむのではなくお祝いをしよう」
 席は1階席の最前列。すぐ下のアリーナ席で換算すると前から10列目くらいに東側(Paul側)だ。最新の音響システムがどういう風になっているのかいまいち理解できなかった。
 1曲目はいきなりBillyのトリルから始まって「Addicted To That Rush」。最初からハイテンション。Pat亡き後のドラマーはNick D'Virgilio。正確でパワフルなプレイだったが、やはりPatとの違いは感じた。
 続いて「Take Cover」「Undertow」と続いた後、『Lean Into It』全曲再現へ。聴いているうちに「懐かしい曲たちへのお別れか」と思った。音のバランスがギターが少し聴こえ難いせいで「Never Say Never」のリフ等、聴きにくかったり、「Lucky This Time」の高音はEricが厳しそうだった。どの曲も名曲だが、順番通りのせいか、結構あっさりとしている印象。やはり、次が何の曲か分からない方が良いなと思った。
 この後はアコースティック・セット(EricとPaulがアコギ、Nickはスネアとキック)。ステージ前方の花道の一番先端で、4人揃って音量も控えめにしたコーナー。個人的にはこのコーナーがハーモニー等よく聴こえて良かった。選曲も最高で「Big Love」「The Chain」「Promise Her The Moon」と、本当に嬉しかった。「Where Do I Fit In?」「Wild World」でこのセットは終わり、続いてPaulのソロ。後半で「Nothing But Love」のソロをそのまま演奏し、好きな曲だったので得をした気分。「Colorado Bulldog」を挟み、Billyのソロ。Billyへの声援が特に大きかった。そしてその流れから「Shy Boy」。大半をBillyのヴォーカルで演奏。Billyは「Voodoo Kiss」の超低音から高音まで多彩さを見せた。
 ここでBilly一人が残り、ファンへの挨拶とスピーチ。バンドの歴史や思い出を挟み、34年間の感謝と日本への愛を伝えていて感動的だった。この後、メンバー一人一人を改めて紹介、最後に紹介されたPaulがなかなか出て来ないと思ったら、ポールの奥さんと子供が登場、大声援に包まれる。続いてEric、Nick、Billyの奥さんも登場。更に、Patの奥さんと長男まで登場し、拍手と涙に包まれた。音楽コンサートで音楽以外で感動するのも珍しい。
 最後に(おそらくアンコールとして)「30 Days In The Hole」、そして恒例の楽器交換タイム。ヴォーカルをとるBillyが掛け合いのレクチュアをしてから「Good Lovin'」。本当にBig Finishとして「Baba O'Riley」。優れたカヴァーバンドとしての楽しみ方も示してくれた存在だったことを思い出し、2時間半の大声援で幕を閉じた。

 久しぶりの武道館だったが、ライブ前後の大行列は昔と一緒。疲労感もを思い出せたのもちょっと嬉しかった。

東京混声合唱団 (2016/四街道市文化センター)
演B 歌A 見B 音A 客D

 代役で出かけたのだが、なんと娘と2人!これだけで嬉しいコンサート!
 まず最初に登場したのは総勢300名弱の四街道市音楽協会合唱団。設立35年、このホールも35年ということでの記念公演という意味合いから2曲、「うたよ」と「水のいのち」を歌い上げた。「うたよ」も好曲だったが、「水のいのち」は組曲のようになっていて、複雑で難しそうな曲だったが、力強い歌と歌詞、それに重厚なハーモニーに聴き入ってしまった。「雨」「水たまり」「川」「海」「海よ」と続くが、特に「川」「海」あたりは感動的だった。
 この後、いよいよ東京混声合唱団の登場。太田道代さんがこの街の出身ということで、四街道合唱団の方にも出ていたが、他にもひときわ目立っている人がいると思っていたら、東京混声合唱団のメンバーだった(バス)。30人くらいだったと思うが、音量が四街道合唱団と変わらないのに驚いた。そして、余裕のなせる業なのか、それぞれにキャラクターがあり、また曲の面白さを際立たせていた。最初は「14世紀のカノン」という世界最古の合唱曲。輪唱のようになっていて、14世紀ながらバッハっぽくて面白かった。続いて、フォーメーションが変わるとジャヌカン作曲の「鳥の歌」に。音程が正確だと歌と楽器の区別がつかない。タンバリン2つととリコーダー2本がところどころにあったが、伴奏も歌でやっているという感じ。さすがプロと思った。
 続いてはラッソ作曲の「エコー」。今度のフォーメーションは変則だ。真ん中から左側に20数名が3列で並び、一番右の奥にこじんまりと8名が並ぶ。右よりは誰もいない空間がある。不思議に思っているとすぐに謎は解けた。タイトル通りエコーのようになっていて、右の8名が本隊を追いかける形。音量も含めまさに“山彦”だ。面白い。続いて「今や五月」「波はささやき」「動物たちの音楽会」と続くが、どの曲も短く、飽きる暇がない。それどころかもっと聴きたいと思わせる。娘は「動物たちの音楽会」が気に入ったようだ。
 15分の休憩を挟んで後半は日本の歌。舞台が青くあやしげな雰囲気の中、低音の男声で幕を開ける。4度のハーモニー(5度のオクターブ下)が静かに響き渡り、衣装も変わったと思ったら、突然漫才のような掛け合い。「んだんだ」の繰り返しが笑いを誘うが、縁起ものなのかお捻りを頂く流れで、掛け合いの2人(太夫と才蔵)を先頭に団員たちが客席を練り歩く。女性もいつのまにか客席の両サイドに並び歌う。結構セリフも入りバラバラのようだが、ちゃんと一つの曲になっていて面白い。前のステージではなく、横や後ろからのハーモニーが興味深い。これが秋田の「萬歳流し」だ。
 この後、「早春賦」「からたちの花」「リンゴの唄」「思い出のアルバム」「おもちゃのチャチャチャ」「幸せなら手をたたこう」そして「夕焼小焼」でエンディング。ロック調のリフをベースにした「おもちゃのチャチャチャ」や客も参加する「幸せなら手をたたこう」も楽しかったし、普段ジックリと聴くことのないこれらの曲も風情があって良いものだとしみじみ感じた。アンコール「2016年4月24日の合唱讃歌」も良い曲だった。「♪歌っていいな。心に一番近い楽器だから」という歌詞にノックアウトされてしまった。「音楽っていいな」を思い出させてくれたような一日となった。
 指揮者は伊藤翔、ピアノは鷹羽弘晃。

Queen+Paul Rodgers (2005/さいたまスーパーアリーナ)
演A 歌A 見C 音A 客A

 Freddie Mercury不在ながら、ロック界屈指のボーカリスト・Paul Rodgersを迎えての復活コンサート。FreddieあってのQueenということなど誰に聞いても明らかだろうが、それは叶わぬ願い。それでもQueenを冠するバンドでFreddieの相棒とFreddieが尊敬するボーカル、そしてFreddieを愛する観客が揃えば、それは正しくQueenのライブだ。
 オープニングは「Reaching Out」から「Tie Your Mother Down」「Fat Bottomed Girls」「Another One Bites The Dust」「Fire & Water」と畳み掛ける。ノリの良い曲はPaulのボーカルでもまったく違和感はない。「Crazy Little Thing Called Love」ではPaulがテレキャスターでコードをかき鳴らして曲が始まる。昔から派手な照明を使うQueenだが、今回も豪華で派手だ。Freddieが悔しがっているのではないだろうか。
 Brianのトレードマーク的なギターだが、CDで聴くとまろやかすぎる音もライブだと聴きやすく暖かみのある素晴らしい音で、これはライブのために作られたギターなのではないかと思った。過去にキンキンしすぎる高音のギターばかりだったが、Brianの音は素晴らしかった。
 中盤のアコースティック・コーナーではRoger TaylorやBrian Mayが歌う。「Say Its Not True」を歌ったRogerはシブい声で本当に歌が上手い。「Love Of My Life」は本当に美しい。この美しい曲をなぜFreddieが歌わないのか。分かっていても自問してしまう。日本だけのサプライズとして「Teo Torriate」を歌い、名曲「Hammer To Fall」へ流れる。Bad Companyの「Feel Like Making Love」やソロ等を挟んで後半も名曲揃い。Rogerが歌う「Radio Ga Ga」では会場が一体となり、Bad Companyの「Can't Get Enough」、更には「A Kind Of Magic」と続き、Freeの「Wishing Well」。残念なのはBad CompanyやFreeの曲を知らない人が多いようで、客の声が小さくなってしまうこと。それでも自分の曲になると更に素晴らしい歌を聴かせるPaulだし、個人的には聴けて最高だ。続いて重厚なハーモニーで「I Want It All」が始まる。ブリッジ部の後、リズムが早くなるソロ・パートの前にテンポの変わらないパートがある。エンディングは少しアレンジされ短くなっていた。そして最後に「Bohemian Rhapsody」の登場。前半のバラードの部分はビデオ映像のFreddieがピアノを弾きながら歌い、BrianとRogerが合わせる演出。中間のオペラ部で懐かしいFreddieの映像を見せた後、後半のハードロック部でPaulが爆発的に歌う構成。どのパートも感動的だ。
 アンコールでは何とアコースティックによる「I Was Born To Love You」でRogerが歌う。日本で人気があるのを聞きつけての計らいだろう。そしてドラマチックな「The Show Must Go On」で盛り上げる。Freddieならではのこの曲をPaulがここまで歌えることに驚く。艶っぽい声とよく響く中低音が素晴らしく、まさにロック界屈指の偉大なボーカリストであることを思い知らされた。続いてはFreeの「All Right Now」。この曲も知名度が一段低くなってしまうようで残念だが、Paulのボーカルは更に表現力豊かになる。「We Will Rock You」では以前のロック・バージョンではなく、比較的原曲に忠実なアレンジだ。締めは「We Are The Champions」。歌い上げるタイプのFreddieらしい曲だが、客に歌わせたり、シャウト気味に歌ったりするPaulのバージョンでも充分に感動的だ。感動に浸っているとお決まりの「God Save The Queen」が流れライブが終わったことを悟る。何から何まで素晴らしすぎるライブだった。

Paul Gilbert (2005/渋谷クラブクアトロ)
演A 歌B 見C 音S 客A

 ホールではなく狭いライブハウスの方が音も良いし親近感があって良い。正面の中央(PAの逆の位置)で聴けたせいか特に音が良かった。
 「Space Ship One」のツアーなので、全員NASAの宇宙服を着て登場。Paulだけオレンジ色。いきなりハイテンポの「On the Way to Hell」でスタートし、一気に「Space Ship One」「I Like Rock」「Potato Head」と畳み掛ける。盛り上がりは最高。ここで少しMCを入れるが、日本通のPaulは日本語。「I'm Not Afraid of The Police」を挟んで早くもRacer Xの「Scarified」。しかし歌ありのポップな曲を連発したせいか、個人的には少しの盛り上がり。「Every Hot Girl Is a Rockstar」を挟むとMCで曲紹介。「聴いて下さい。バイキング・コングゥ〜」と完全にカタカナ英語になっているのが凄い。アメリカ人が「Kong」を「Konguu」と発音するのは難しいだろうに。他の箇所でもLinusの紹介時にも「ハリウッドォ」と母音を強調していたので、彼にとってのコダワリのようだ。この後、「3曲カバー曲をやります」と相変わらず日本語で紹介し、まずはBeatlesの「Something」。ほぼ原曲通りだが、バンドがトリオなので、ソロの合間にコードを挟みながら2人前を弾いていた。続いてPat Traversの変拍子の曲「Heat In The Street」そして何とMadonnnaの「Open Your Heart」を演奏。客に「ジェフさん、ワイルドなゴリラみたいにドラムをぶっ壊して」と言わせ「Jackhammer」とDrum Soloを披露。「あなたの頭は何で出来ていますか?」と客に問い「Boku No Atama」を演奏。笑いを多くとりリラックスした雰囲気を締めるように「Interaction」「Technical Difficulties」で再びテンションを上げる。この後、Dokkenの「Breaking The Chain」を1コーラスだけLinusに歌わせ、客に何の曲が聴きたいか聞くとあちこちから勝手なリクエストが続々。その中から「Sunshine of Your Love」をギターのみの弾き語りで披露。完璧な歌詞だけでなく、Claptonソックリのビブラートつきの完コピ・ソロが凄かった。「The Number of The Beast」をLinusと共に少しだけ披露した後、「We All Dream of Love」を一人だけの弾き語り演奏。この曲はハーモニーをつけて欲しかった。MCは相変わらず日本語で、Linusにカンニングペーパーのノートを見せて日本語でやらせる場面も。後半に入るとPaulもLinusも曲間のステージ上でチューニングするシーンが増え、せっかくのノリに水を刺す場面も見られた。「Bliss」「Individually Twisted」「Suicide Lover」「Karn Evil No.9」で一旦ステージを去る。
 アンコールでは「Play Guitar」「Down To Mexico」を、2度目のアンコールではVan Halenの「Little Dreamer」、そしてMr.Bigの「Green-Tinted Sixties Mind」を演奏。ソロ後最初のツアーではカポによるキーを変えて演奏していたが、今回はオリジナルと同じ。これこそオリジナルだと思ったが、間奏部のベースとのユニゾンは再現されず、少しだけ寂しかった。最後は新譜の中では個人的に一番好きな「SVT」で締め。音は良いし、盛り上がったし、なかなかのライブだったが、Paulが演奏中ずっとヘッドフォンをつけていたのが気になった。耳が悪いというのは本当のようだ。

Extreme (2005/渋谷公会堂)
演A 歌B 見C 音B 客S

 10年ぶりに再結成しての来日。ベース以外がオリジナルメンバー(ベースはフランス人のLaurent Duval)。Garyの張り切り様は凄まじく、NunoもPaulもとても楽しそうで、全盛期もこんな感じだったのだろうと思わせる元気良さ。追加公演ながら客もよく入りノリも最高。バンドが良いから客がノルのか、ノリが良いからバンドも良くなるのか、ともかくかなりの盛り上がり。それも時間の経過とともにどんどんヒートアップしていくところが凄い。
 1曲目の「Warhead」から「Little Girls」「Rest In Peace」と続くベスト選曲。中盤のアコースティック・パートは昔と同じく「Midnight Express」から。凄まじい低音プレイよりも高音のコード・プレイの美しさが際立っていた。その後、数曲を触りだけ演奏したりして楽しませた後、唐突に「More Than Words」が始まる。客席はここで最高潮となる。イントロだけで一旦止めてやり直したり、出だしから客に歌わせたり、ギターで途中にオカズを入れたり、自由な雰囲気だ。再びバンド・プレイになりクライマックスへ向かう。途中でクルー全員の紹介コーナーがあったが、これは日本ツアーの最終日だったことと日本公演が大成功したことの満足感からだろう。随所に客と会話するようなシーンもあり、アットホームな感じもする暖かみのある雰囲気。この後、凄まじい「He-Man Woman Hater」のイントロのソロを再現し、「Get The Funk Out」で爆発的盛り上がり。最高潮と思われた「More Than Words」以上に周囲が熱狂。興奮の中でバンドがステージを去るがアンコールの拍手が鳴り止まない。お決まりのアンコール要求ではなく、本当に「早く出て来い」と言わんばかりの熱狂的な拍手の嵐だ。突然、SEが響きピアノが鳴り響く。「Decadence Dance」だ。望み通りの展開に歓喜の渦。「Hole Hearted」を挟み最後は「Mutha」だ。アレンジはかなりアップテンポのパンク風バージョン。ライブの最後にはもってこいだ。ライトの数も標準的で、他にはスクリーンも紙吹雪も何もないシンプルなステージだが、とてもエネルギッシュでノリの良い楽しいライブだった。音の分離がもう少し良ければいうことナシ。

The Rock Odyssey (2004/横浜国立競技場)

Aerosmith
The Who
稲葉浩志

演B 歌A 見B 音B 客A
演B 歌C 見C 音B 客B
演C 歌B 見C 音B 客C

 久しぶりのロック・フェスティバル。この日の出演は、出演順にLove Phychedelico、Josh Todd、Michelle Branch、Paul Weller、稲葉浩志、The Who、Aerosmith。実際に見たのは稲葉浩志の終わり4曲くらいから。B'zですらほとんど知らないため、当然、稲葉ソロは知らないのだが、テレビでよく見る彼そのもので歌い方もB'zだった。演奏も上手いバンドだったが、後のバンドと比べるとサラッとした感じでロックっぽい面白味は感じられなかった。
Roger & Pete 続いては生きる伝説の初来日!The Whoだ。BeatlesやStonesと同じ60年代生まれのバンドが21世紀になっての初来日。この日の主役はトリのAerosmithではなく、間違いなくThe Whoだろう。私はこの日は体調が悪く、座っているだけでもツラかったのだが、1曲目「Can't Explain」のリフだけでふっとんでしまった。もうこの1曲だけでも大満足だ。ところが続いて「Substitute」が始まる。好きな曲イキナリの連発に「マジかよ」という感じ。往年そのままのPete Townshendの人間風車のアグレッシヴなアクションが嬉しい。負けずにRoger Daltreyもマイクをぶん回している。リフにしろアクションにしろ結構今風に聞こえるが、ハーモニーやメロディの雰囲気は60年代っぽさを感じる。3曲目は「Anyway Anyhow」、4曲目は「Baba O'Rely」。その後も「Who Are You」「My Generation」「Pinball Wizard」「See Me Feel Me」等、聴きたい曲のほとんどが網羅され、最後は「Listening To You」で幕を閉じた。The Whoを知らないAeroファンと思われる若い人たちの中には寝ている姿も見られたが、それ以上に興奮するオヤジもいて嬉しかった。Peteのプレーぶりは、思ったよりも弾けていて、早いフレーズは開放弦の多様パターンと、カントリー風の指弾きによる3連トリル系の2パターンが多かった。
Joe & Steven 大興奮のThe Whoの後はいよいよトリのAerosmithだ。日も落ちて涼し気な風が吹き抜けている。Aerosmithは実に14年ぶりに見るのだが、ステージ上の彼らはやはり時間の分だけ年をとったなという印象。しかし、Steven Tyler、この男だけは年をとらない。左上腕には「猛暑」と書かれていた。またバスドラには「ホンキン」と書かれていた。ブルーズ・アルバムの「Honkin' On Bobo」のことだろう。1曲目「Back In The Saddle」、2曲目「Toys In The Atic」と古い曲から入って来た。新旧のファンによって反応が違う。3曲目の「Love In An Elevator」で全員が最高潮に達した。ブルーズも挟みながら「Cryin'」「Jaded」「Dream On」「Walk This Way」「Sweet Emotion」「Living On The Edge」といった代表曲もしっかり演奏され、最後は「Train Kept A Rollin'」で締めた。14年前以降に作られた曲が聴けるのが嬉しいし、何よりパワフルな彼らを再び目に出来て勇気とパワーをもらった気分だ。
 最近は音響技術が進歩しているのか、音がかなり良かった。久しぶりの屋外ライブだから反響が少なかったからかもしれない。フェスティバル形式は体力的にキツめだが充実度は120%。大好きなバンドは単独で見たいと思うが、The Whoのようなバンドが出てくれ、メインが超大物となるとなるともう何も文句はない。

Eric Clapton (2003/日本武道館)
演A 歌B 見C 音S 客D

 10年以上前に故George Harrisonと一緒に来日した時に2度見て以来、単独公演を見たいと思いつつ今になってしまったが、とうとう実現したコンサート。引退し、来日はもうないのではないかと言われていた中でのことだった。選曲はまさにベスト・ヒット的で、1曲目にブルーズ色の濃いシャッフルの「Crossroad」から始まり、「I Shot The Sheriff」と続く。その他、「White Room」「Change The World」「Badge」「River Of Tears」「Lay Down Sally」「Wonderful Tonight」「Cocaine」「Layla」等、名曲がズラリ。もちろんブルーズもたっぷり。
大きなポイントは2点。まず第一に音が非常に良かったこと。聴く席にもよるだろうが(かなり右の1階席だった)、反響音の大きい武道館とは思えないクリアさで、各楽器ともよく聴こえた。次に、Claptonが予想以上に弾きまくっていたこと。シブいブルーズ・アプローチに終始するかと思いきや、早弾きも含め、たっぷりと「スローハンド」を堪能出来た。それから、特に前半はドラムの切れ味が素晴らしく、曲を引き締めた。アンコールでは、何と「Sunshine Of Your Love」まで飛び出し、最後はアコースティックの「Over The Rainbow」で幕を閉じた。

Paul McCartney (2002/東京ドーム)
演A 歌A 見B 音B 客B

 9年ぶり3回目のソロ来日。前座の幻想的なダンスは終わると突然ショーはスタートした。Beatles、Wings、ソロの各時代の曲をバランス良く配置されている。ポールは素晴らしかった過去2回を上回る好調さで、バンドもドラムのエイブをはじめ素晴らしい。手数の多い迫力のドラムと見事なコーラス・ワーク、そして一人何役もこなすキーボード。中盤にポールのソロタイムがあり、アコギやキーボードでの弾き語りがあり、コーラスなしの「Every Night」「We Can Work It Out」や珍しい「You Never Give Me Your Money」をプレイ。中盤のハイライトはウクレレ弾き語りによるジョージへのトリビュート「Something」と初ライブの「She's Leaving Home」。終盤は怒涛の名曲の連発に文句のつけようがない。スクリーンに同時通訳の試みをしたが、訳が1テンポ遅く、先にポールが日本語で話す場面も多々あり笑いを誘った。映像を駆使したステージセット、観客のノリも過去最高で、最上級のコンサートであった。

KISS (2001/東京ドーム)
演C 歌B 見S 音D 客A

 個人的にHR/HM系で最初期に好きになったバンドのライブの初体験は、最後のワールド・ツアーかもしれないフェアウェルツアーであった。開場前のドームはKISSコスプレ大会のようで驚いた。オリジナル・メンバーが復帰してのものだが、直前にPeterが脱退し、Eric Singerがドラム。しかし、何と髪を黒く染め、Peterのメイクで、遠目にはPeterそのものであった。ただしドラムは非常に上手ところがPeterとの違いだった。
 1曲目「Detroit Rock City」でKISSのエンターテインメント・ショーの始まり。あのメイクなら偽物でも見分けがつかず、テレビを見ているような錯覚に陥る。が、例のドラマチックなギターソロで我に返る。本物のKISSだ。続いて「Duce」。以前、私がバンドで演奏した曲の連発だ。この後も人気曲の連発に歴史の長さを実感。Ace在籍時の曲だけでなかったのに驚いたが、フェアウェルツアーなのだから当たり前かもしれない。Ace時代以外では「I Love It Loud」「Heaven's On Fire」「Lick It Up」が演奏された。3曲ともギターはシンプルなので問題ない。
 Geneの火吹きや血、「God of Thunder」では空中高く舞い、Aceのギターは煙や火花を吐く。こんなに火を使うショーは初めてだ。炎が炸裂し、回転しながら火の粉が降り注ぐステージも凄い。しかしやはり主役はPaul。存在そのものがセクシーである。周りは興奮状態。「この日は最高だ」と言い、初来日の思い出を語るPaul。「日本のファンはファミリーだ」という言葉に、これが最後のお別れだという気持ちが交錯する。そして始まった「Love Gun」では客席の上を飛び、中央の特別ステージへ。最後の「Black Diamond」は何とEricが歌う。Peterよりもウマい。
アンコールは「I Was Made For Loving You Baby」。ああ、この曲もあったんだ。すっかり忘れていた名曲はまだあった。「Rock And Roll All Night」では猛烈な紙吹雪が舞う。昨年のBon Joviの時の5倍の量はある。まさしく豪華絢爛、腹一杯のロックンロール・ショーで現実を忘れさせてくれた時間であった。恐らくこれが、KISSがライブで提供したいものなのだろうと思いながら、エンディングテーマ「God Gave Rock'n Roll To You II」を聞きながら会場をあとにした。

AC/DC (2001/横浜アリーナ)
演A 歌C 見A 音A 客S

 長年、来日の噂が立ち、消えてゆくのを繰り返していたAC/DCが、ついに19年ぶりの来日を果たした。待ちに待ったファンの想いが爆発した凄まじいライブとなった。1曲目の「You Shock Me All Night Long」から圧倒的な存在感のアンガスのギターに煽動され、大きなノリが会場中を埋める。アリーナが波打っている。
 アンガスは年齢を感じさせず右へ左へ前へ上へ、ビデオでよく知っているあのアンガスそのまま。ライブ・バンドとして世界に君臨してきただけあって、迫力、パフォーマンスとも最高レベル。ドラムの音が後ろに引っ込んでいたが、ヤング兄弟のギターが充分リズミックなので気にならない。かえってギターがよく聴こえ良いかもしれない。名曲の連発と心地よいリズムに、全てを解放しスッキリした気分になった。

Bon Jovi (2000/東京ドーム)
演B 歌C 見B 音C 客C

 東京ドームで音楽コンサートは辛いものがある。音の反射がヒドイ。かなり良い席にも関わらず、ステージはとても遠い。客の盛り上りも分散してしまう感じだ。
 初めて見たBon Joviは大物の風格があり、特にJonは俳優業も好調なせいか、カッコいい雰囲気を作るのがとても上手いと思った。ヒット曲が沢山あるだけに、次々に強烈パンチを繰り出し圧巻だった。新作の曲もバランス良く配置されていたため、新旧ファンとも楽しめたのではないだろうか。中盤にはアコースティックセットがあり、ステージの一番右に小さなセットを組み、3曲も演奏した。左側の客からは全く見えなかっただろう。バラードらしいバラードは、アコースティックの時の「Runaway(ピアノアレンジ)」くらいであったのも良かった。Ritchieもかなりの人気があった。

Dream Theater (2000/渋谷公会堂)
演S 歌A 見A 音B 客B

 アルバムの曲を丸ごと全部再現した上に、アルバムではナゾのままであった部分の解答が映像で示され、映画とロック・オペラの共演のような感じであり、知的な面白さを堪能することが出来た。アルバムを聴く限り、どうやって再現するのだろうと思えた曲も完璧以上な演奏と演出で素晴らしいの一言に尽きる。高度な演奏力のみならず、曲の良さも非常に際立っていた。また完成度の高い楽曲の中にも表現者としての主張が多く盛り込まれていることも特筆すべきだろう。
 注目の新加入・ジョーダン・ルーデスだが、これも予想以上の凄腕であり、過去に見たキーボード奏者(クラシックも含む)の中でも最強であったと思う。キーボード・ソロの超テクニカル「キラキラ星」や「The Dance of Eternity」の中ジャズ系の地中海風ソロ等、呆れるほど凄い。
 ドラムが凄いのは言うまでもないが、地味ながらベースも素晴らしかった。前回精彩を欠いたヴォーカルも今回は文句ない出来であった。