2年夏の謎

 豪華な出場校
回戦 試合 勝者 スコア 敗者




通天閣 12-8 西武学園
赤城山 8-7 隼 人
明 訓 6-5 BT学園


不明


弁 慶 1-0 土佐丸
佐田二 不明 三鈴商
不明


甲府学院 6-4 長 州
小金井学院 3-2 白扇閣
藤 田 1-0 北海大付
不明


田尾商 4-2 関谷工
クリーン 8-0 三輪商


江川学院 1-0 袴田工
井上商-中村工 (結果不明)


不明


高松臨海 8-6 森本商
今 西 5-4 熊藤学園
通天閣 8-0 佐田二
弁 慶 3-2 明 訓


赤城山 (相手,勝敗不明)
不明




10

11




12

甲府学院 1-0 三浦商

13
通天閣 不明
甲府学院 不明 都城大成
14   通天閣 1-0 甲府学院
 2年夏は謎の多い大会だ。それは明訓が早々と敗退してしまったので、その後の描写が極端に少ないからだ。
 開幕当初は盛り上がりそうな雰囲気になっていて、ライバルたちがズラリと顔を揃えた豪華な出場校になっている。ざっと紹介すると、甲子園でのライバルの常連・土佐丸や通天閣に加え、前年秋の関東大会や春のセンバツでしのぎを削った甲府学院、クリーンハイスクール(長いので「クリーン」にする)、赤城山、江川学院も出場。そして謎の弁慶高校。更に個人的にはりんご園農、藤田高校も気になるところ。これは後に詳述する。
 まず、作中にある情報のみで大会の全日程をおさらいしてみると右のようになる。不明の箇所が多い。特に明訓敗退後が多い。
 1994年以前はその都度抽選をし直していて、大会5日目の第1試合後に甲子園で抽選をしていたため、この日は3試合となっていた。しかし、作品中に第4試合の予定が出ているので、ここは作品に従い4試合日とする。その分、8日目、9日目が3試合日となるが、日程のつまる後半に少しでも余裕を見る点で、この日程の方が良い気もする。
 さて、気になるのは有力ライバル校のその後の動向だ。決勝を戦った通天閣と甲府学院以外の有力校はどうなってしまったのだろう。

 不明ながら分かること
 まず、右表の中で分かっていることから、表に記載していない部分を補足する。
 優勝している通天閣は開幕直後の試合から出ているので6勝している。13日目の第1試合は不明だが、少なくとも通天閣が勝っていることは分かる。
 甲府学院も1回戦からの登場なので5勝。
 ベスト4の都城大成は初戦が分からないので勝数は不明ながら、当然2、3回戦や準々決勝は勝利している。
 三浦商も初戦が不明だが、少なくとも2、3回戦は勝利している。
 更に2回戦で敗退した中で1回戦を戦ったチームは、熊藤学園、佐田二、そして明訓ということになる。5日目第3試合から7日目第2試合の今西までは1回戦が不戦勝なので、敗退校は0勝。以下に整理すると、

1回戦勝利校 通天閣、赤城山、明訓、弁慶、甲府学院、
小金井学院、藤田、田尾商、クリーン、
熊藤学園、佐田二
2回戦勝利校 通天閣、甲府学院、都城大成、三浦商
江川学院、高松臨海、今西、弁慶
3回戦勝利校 通天閣、甲府学院、都城大成、三浦商
準々決勝勝利校 通天閣、甲府学院、都城大成

ということになる。
  通天閣 甲府学院
1回戦 西武学園 長 州
2回戦 佐田二
3回戦 弁 慶
準々決 三浦商
準決勝 都城大成
決勝 甲府学院 通天閣
 それから、通天閣と甲府学院の決勝までの相手も改めて抑えておくと、左のようになる。

 有力校のその後を探る
 主な有力校でいつの間にか敗退してしまったのは、クリーン、赤城山、江川学院だ。この3校はいずれも通天閣か甲府学院に負けたのだろうか? そこを考えてみる。
 確実に分かっていることは、赤城山とクリーンは1回戦勝利、江川学院は2回戦勝利だ。すると、通天閣と甲府学院がこの3校に勝利したとすると、少なくとも1校は準々決勝に出たことになり、つまりベスト8までは残ったことになる。赤城山vs甲府学院とか通天閣vs江川学院があったかもしれないとは、考えただけでもワクワクするところだが・・・。

 アナウンサーの言葉の謎
 ここで有力な証言がある。3回戦で弁慶が通天閣に負けた後、ラジオのアナウンサーが「かくて東日本勢は甲府学院を残して総だおれとなったのです」と言っているのだ。それなら、赤城山、クリーン、江川学院とも東日本勢なので、この試合以前に敗退したことになる。
 しかしおかしいことがある。それは三浦商の存在だ。三浦商は福島県の代表なのでもちろん東日本勢なので、このアナウンサーは明らかに間違っていることになる。
 また、12日目の第4試合後、アナウンサーが甲府学院のことを「関東ただ1校の生き残り甲府学院・・・」と言っている。関東以外の東日本勢が残っているかのような言い方だが、弁慶が負けた後のラジオのアナウンサーが間違えるほど東日本勢の敗退が目立っていたのだろうから、ベスト4の時点では甲府学院が東日本勢最後の1校だったであろう。通天閣の準決勝の相手は西日本勢だということになる。

 弁慶の試合日程
 通天閣vs弁慶の試合の日程は不明だが、アナウンサーが間違えるほど東日本勢の敗退が目立っているということは、この時点で他の有力校もすでに敗退していると考えられる。
 ということは、少なくとも江川学院の3回戦の試合よりは後に行われた試合であることは確実。東日本勢が総崩れになるほどなのでこの試合は出来るだけ後の日程であったと予想する方が都合が良い。
 また、この日は武蔵坊が単身岩手へ帰郷した日でもある。弁慶の2回戦の試合は7日目第4試合だったので、少なくともその日から通天閣戦のあった3回戦の日までの3晩は入院していたことになる。額を割り意識を失うほどで、頭部の負傷ということもあり大事をとったのだろうが、3晩の入院は少し長めにも思うが、その理由は脳への影響を検査していたということであろう。大会8日目に検査をし、その結果が遅くとも9日目には出る。その検査結果により、岩手へ帰ることが可能だという判断で翌朝に帰したのであろう。
 以上のことから、通天閣vs弁慶の試合は10日目の第3か第4試合の可能性が高いことになる。

 甲府学院戦シミュレーション
 改めて謎の有力3校について考えてみるが、通天閣vs弁慶の試合の前までにすべて敗退しているということになる。通天閣は3回戦までの相手がすべて判明しているので、甲府学院に負けたのだろうか? 甲府学院の2回戦と3回戦は不明なので、2回戦は赤城山かクリーン、3回戦は江川学院と対戦した可能性がある。
 まず江川学院が対戦する可能性がある3回戦。江川学院のエース中は肩痛から復調途上であり、この後の秋の関東大会でも本調子までは行っていない。投手としては賀間より中の方が数段上の感じがするが、両チームとも作中有数の貧打のチームなので、ロースコアの接戦。打線も一発のあるのが賀間と中ということで、甲府学院が勝ったということは賀間の一撃で勝ったのだろう。甲府学院は江川学院以上の貧打なので、それしか考えられない。ただし、賀間のホームランは初戦の長州戦の後、三浦商戦で第2号といっているので、江川学院戦でホームランは打っていない。賀間の前の打者が四死球かエラーで出塁後、賀間に長打が出たということであろう。
 次に甲府学院の2回戦を考える。可能性として赤城山とクリーンだ。どちらも弁慶vs明訓をTV観戦していて、明訓の敗戦にショックを受けているが、翌日に難敵の甲府学院と対戦する緊張感はないようだ。クリーンの3回戦は9日目ということだろうか。
 赤城山は翌日の第1試合だが、これが甲府学院との試合だろうか。赤城山は甲府学院を難敵と見ていないということも考えられるが、秋に明訓と接戦を演じたのを知っているし、木下と賀間は中学時代からの知り合いでもあるので、実力を軽視することはないだろうが・・・。
 赤城山、クリーンのどちらも投打とも甲府学院以上の実力校で、赤城山はセンバツ4強にも進出している。クリーンは投打に強力な核がいる。
 まず、甲府学院vsクリーンを考えてみる。甲府学院の貧打では、影丸が背負い投法を出すまでもなく抑え込まれてしまうだろう。江川学院戦同様、とれてせいぜい1点だ。一方、クリーン打線vs賀間投手はどうだろう。賀間のパワー溢れる砲丸投法に苦戦はするだろうが、パワーなら負けていないフォアマンに加え、手首の強い影丸もいるので、多少の失点はやむなし。結果、クリーンが勝ってしまうことになる。
 甲府学院vs赤城山はどうだろう。赤城山も打の中心・国定と投の中心・木下がいる好チームだが、クリーンとは少々様子が違う。野球センスは賀間や影丸より国定の方が上な感じもするが、賀間がパワー投法でねじ伏せに来ると国定は打てないかもしれない。一方、変則の木下が賀間のタイミングを外してもこれまたバント打法とパワーで長打が打てる賀間に軍配が上がるかもしれない。
BT学園 1回戦 明訓に負ける
土佐丸 1回戦 弁慶に負ける
明訓 2回戦 弁慶に負ける
赤城山 2回戦 甲府学院に負ける
江川学院 3回戦 甲府学院に負ける
弁慶 3回戦 通天閣に負ける
クリーン  不明
甲府学院 決勝 通天閣に負ける
 よって、甲府学院が勝ったのは、2回戦で赤城山、3回戦で江川学院ではないかと予想できることになる。
 かくして作中の有力校の結果は右図の通りとなり、唯一クリーンだけが不明ということになった。

 未知の強豪校
 クリーンは誰に負けたのか? 個人的には、クリーンを明訓や土佐丸と並ぶ優勝候補校に挙げたい。核が2人いて、泥くさいチームが洗練された私立のイメージもあるので、通天閣や甲府学院のようなワンマンチームにも勝るとも劣らない実力を持っていると評価したい。
 そこで作中には登場しない未知の強豪校を考えてみる。一つ気がついたのは、江川学院の存在をヒントに考えたパターンだ。江川学院の中投手のモデルは、もちろん作新学院の江川投手であろう(中という名前や単行本の「こうして生まれたライバルたち」等を見ると、弟の方だとも言われているが、いずれにしても江川だ)。左右の違いや打順等の差異はあるが、センバツで「甲子園に怪物が現われた」という扱いはまさに江川投手。栃木県の学校でもある。
 このパターンがもう一校ある。8強の福島・三浦商だ。モデルは恐らく阪急にいた三浦広之投手であろうから、投手力のある好チームなのであろう。投手力でベスト8まで上がって来たチームで、賀間にサヨナラ本塁打を浴びるまでは0−0の投手戦を演じた。1カットだけ登場したエースは、頼りなさそうだったが恐らくキレのある変化球(三浦広之投手がそうだったので)を武器にした好投手なのであろう。
 このパターンを参考にし、別の未知の強豪を想定できそうなのが、愛媛・藤田高校だ。愛媛の藤田といえば、巨人のエースだった藤田元司投手を思い出す。これも江川学院や三浦商と同じパターンで、好投手のチームなのではないだろうか。更にこの藤田高校、開会直前の球場の外の雑踏の中の後方にひと際巨漢の選手が見えている。有力ライバル校以外ではっきりと見えているのは、この選手だけだ。作中において、巨漢選手といえば、犬飼武蔵や雲竜のようなパワーヒッターが多い。つまり藤田高校には投打の柱がいるということになるのだ。
 野球処・四国のチームだし、クリーンを倒すのにはこの藤田高校がピッタリだと思う。両チームとも投打の柱がいるので、好試合だった可能性も考えられる。想像だけなので何とも言い難いが、一応、この線で考えていく。
 藤田高校がクリーンと2回戦で対戦し、勝利。3回戦では、通天閣vs弁慶、甲府学院vs江川学院があるので、藤田高校はそれ以外と対戦。都城大成や三浦商と対戦していたら敗れたことになるが、ここは希望的想像として、是非空白のベスト4まで勝ち進んでもらいたい。そうすればベスト4の椅子はすべて埋まるし、通天閣vs藤田というのも見応えのある好試合だっただろう。
 他にも、田尾商や袴田工も江川学院や三浦商と同じパターン、センバツで登場した川上工も同様だろう。初戦敗退の袴田工はともかく、田尾商も打撃力で上位(まだ空白なのは8強が3つ)に進出したかもしれない。

 りんご園農
 この大会でもう1校の注目はりんご園農。なぜなら翌年に出場し、明訓と対戦し、序盤は好ゲームを演じるからだ。星王は不在の上、2年生主体だったかもしれないが、それでもなかなかの実力校と考えられる。特に中村投手は小柄ながらキレで勝負するタイプで、よほどの強豪と当らない限りそれなりに試合を作れる投手だろう。中村投手は登場しないが、開会式で3年生っぽい長身の選手が見えている。翌年は2回戦で敗退してしまうだけに、是非、残りの8強の椅子に座ってほしいチームだ。まだ通天閣の準々決勝の相手が空白なので、是非、りんご園農を推薦したい。

  通天閣 甲府学院
1回戦 西武学園 長 州
2回戦 佐田二 赤城山
3回戦 弁 慶 江川学院
準々決 りんご園農 三浦商
準決勝 藤 田 都城大成
決勝 甲府学院 通天閣
 以上により補正される通天閣と甲府学院の決勝までの対戦校は右図にようになる。どちらもなかなかの相手と対戦していることになるが、特に通天閣は、楽勝した佐田二以外は相当な難敵の連続だったといえる。初戦の西武学園も打撃の良いチームで乱打戦、弁慶は武蔵坊不在のため大差となったが、義経はもちろん、明訓戦で殊勲の牛若らは健在だったはず。そして、中村投手のりんご園農、エース&巨漢選手のいる藤田高校、最後は怪力・賀間の甲府学院ということになる。
 甲府学院もかなりの勝ち上がりぶり。何といっても赤城山と江川学院を倒したのが大きい。前年秋の関東大会では初戦敗退で、明訓はもとより、赤城山、クリーンよりずっと格下扱いだったし、センバツでセンセーショナルな活躍を見せた江川学院の華々しさもなかっただけに、この夏、ようやく名を上げることに成功したといっったところ。