3年春の関東大会

 『ドカベン』と『大甲子園』の間
 3年春は『ドカベン』と『大甲子園』の過渡期で、ほとんど情報がない空白の期間だ。この期間に何が起こったかを想像するのはなかなか楽しい。
 まず、明訓は里中が不在なので、エースは渚だ。岩鬼も登板している可能性は高い。
 県内の有力校が、夏の大会では終盤まで残っている。ベスト4に明訓、白新、横浜学院、東郷学園で、東海もベスト8に入っている。前年は有力校が春季大会を手抜きし敗退したためノーシードとなり、序盤から明訓とぶつかることになったが、3年時は違うようだ。ということは、各校とも春季大会から本気モードであった可能性が高い。もはや手の内を隠す必要もないほど数多く対戦している。

 中西の言葉
 数少ない情報の中、夏の甲子園で中西球道が「関東大会でも会えなかったし」と発言していて、これは春の関東大会のことだと思われる。会えなかった原因が自分たちの敗退というには少し違和感のある言い方なので、これは明訓の敗退を意味しているのではないだろうか。明訓はセンバツで優勝しているので、春の関東大会は推薦で出場できるため、県大会の成績に関わりなく出場している。にも関わらず「会えなかった」ということは、明訓が敗退したということ。
 一体どのチームに負けたのだろう。青田でないことは確かだ。他の関東有力校を考えると、夏に甲子園に出ることになる巨人学園や光は関東大会に出ていなそうだし、それ以外の有力校となると、江川学院、赤城山、群馬二、クリーン、甲府学院、それに同じ神奈川のチームもあり得る。

 不知火の言葉
 夏の大会での不知火の問題発言もある。「明訓を倒せばそれでいい。勝っても甲子園はくれてやる。あれは夏祭りだ」という、高野連が聞いたら問題に発展するであろうセリフだ。
 このセリフを深読みすると、明訓を倒すことだけに執念を燃やしているので、本気モードで臨んだ春の大会でも明訓を倒したわけではないように聞こえる。すると春も明訓に負けたのだろうか? 里中不在の明訓に? 春の大会とはいえ、明訓と対戦したら燃えないわけにもいかないだろう。山田や殿馬らはいるのだから。すでに1年夏から4度対戦し、すべて負けている不知火は、甲子園がかかっていない春とはいえ、これ以上の敗北は許せないだろう。つまり、春は明訓と白新は対戦していないということになる。

 春の神奈川大会
 明訓と白新が対戦していないということは、少なくともどちらか一方は別の相手に負けたということ。県内で明訓のライバルを見ると、明訓、白新、そして東郷学園が3強ということになる。東郷学園も前年秋は明訓の最大のライバルのように描かれながら、対戦しないまま終わってしまい、この後の夏の大会でも白新に負けて明訓とは対戦しない。その際、小林は「山田と対戦しないのが心残り」と残念がっているので、春も明訓とは対戦していないことになる。
 ここは一つ、夏の4強の横浜学院に頑張ってもらうことにしよう。横浜学院が準決勝で明訓に勝利、決勝で白新に負けるというシナリオだ。

 横浜学院
 前年夏は神奈川大会準優勝の横浜学院。大黒柱の土門が抜けたが、その後は谷津が中心となっている。投手陣は岩沢がエースのようだが、前年秋の大会前には鯵坂という投手も評価を集めている。2枚看板のチームの可能性が高い。また、監督が土門なので、投手には力を入れないはずがない。
 打撃の中心は谷津、投手陣は2枚看板というと、渚と岩鬼の明訓より期待できそうだ。明訓を倒す可能性は充分ある。

  1位 2位 3位 4位
茨 城 大利根 日立学園    
栃 木 江川学院 日光学園    
群 馬 赤城山 群馬二    
埼 玉 下 尾 西武学園    
千 葉 青 田 クリーン    
東 京 高 代    
神奈川 白 新 横浜学院 明 訓(推薦)
山 梨 甲府学院 赤富士 甲 斐 石和影津商
 関東大会出場校
 ここからは完全に想像だけの世界だ。なので、どうせならオールスター的な楽しみを希望して各県代表校を考えてみよう。過去に明訓のライバルとして登場し得るチームは極力登場させる。1994年は山梨開催なので、山梨だけ4校出場だ。
 青田と江川学院は夏も勝っているので、一番すんなりと決まる。また、秋に活躍した下尾、日光学園、大利根、赤富士が入るのも問題ないだろう、夏に出る日立学園、群馬二、西武学園、甲斐も良いだろう。これでほとんど決まってしまう。
 千葉は、クリーンと中山畜産で迷うところだが、影丸とフォアマンが健在の上、中山畜産は豊臣が出れないだろうから、脇坂と新山のダブルエースといえど、クリーンが一枚上だろう。秋は豊臣と雨の影響で中山畜産に不覚をとった可能性が高い。
 東京は、夏の巨人学園と光はともに勢いで勝ったようなところがあるので、この時点での上位進出はないだろう。一番安定的に強そうなのが、夏に東東京で準優勝する茜。もう1校は『ひと夏の冒険』の高代高校を選んでみた。ルンペン投法の太田垣投手は、甲子園出場はならなかったものの、一度は大きな舞台で投げさせたい投手だ。『一球さん』の神宮高校、『ダントツ』の一番星学園、折越学園、槍田実等も選びたいところだが、2枠しかないので涙を呑んだ。
 それでもなかなかの豪華な顔ぶれだ。明訓以外の神奈川勢が他県の強豪と戦うのも興味深い。

 仮想関東大会で明訓敗退
 まず1回戦3試合。簡易なクジで決めた3試合は、群馬二vs石和影津商、日立学園vsクリーン、横浜学院vs甲斐。群馬二とクリーンが打力で勝り、横浜学院と甲斐は接戦になりそうだが、横浜学院が競り勝つ。
 2回戦。明訓vs西武学園、青田vs日光学園、白新vs高代、甲府学院vs群馬二、茜vsクリーン、下尾vs赤富士、赤城山vs大利根、江川学院vs横浜学院。
 明訓が敗退するのにピッタリなのが西武学園と見た。作中まったくノーマークだが、実はなかなかの好チーム。2年夏は優勝した通天閣に唯一打撃戦で対抗したチームで、坂田から8点を奪ったチームだし、3年夏は瀬田実から18得点、負けた群馬二戦でも6得点と、典型的な打撃のチーム。渚では抑え切れず、明訓打線と相当の打撃戦となると見たが、西武学園が競り勝つとしてみる。打撃戦に慣れている西武学園に対し、明訓は打ち込まれると血がのぼり、やがて疲労でつぶれる渚には不利。
 その他の試合。秋の雪辱を晴らしたい火野投手の日光学園は中西・青田に力の差を見せつけられ、ルンペン投法は不知火に通用せず、昨夏甲子園準優勝の甲府学院は強打の群馬二に敗れる。反対ブロックでは、クリーンがフォアマンの長打炸裂で勝ち、下尾と赤富士は好試合になりそうだが、秋関準優勝の地力で下尾が競り勝つ。国定の抜けた赤城山は力が落ち、平手投手の大利根が勝利、横浜学院は中投手を打てずに敗退。
 3回戦。西武学園vs青田、白新vs群馬二、クリーンvs下尾、大利根vs江川学院の4試合。最初の2試合は打撃のチームと投手力のチームの対決だが、格の違いで青田と白新の勝利。クリーンと下尾も好試合になりそう。前年秋に明訓vs中山畜産の試合を影丸と仁は一緒に観戦している因縁があるが、打撃力は両者互角ながら投手力に差があり、クリーンの勝利。大利根と江川学院は投手戦となるが、実績で江川学院が上だろう。これで4強が出揃う。
 準決勝。青田vs白新はかなりの注目の試合になりそう。だが、明訓と対戦できずモチベーションの下がる青田に対し、全国的にも注目を集める中西にライバル心を燃やす不知火が燃えて、白新の勝利。もう1試合はクリーンと江川学院。フォアマンがいる分だけクリーンが上。
 決勝は白新vsクリーンで、これも夢の対決だが、執念と迫力の不知火に花を持たせたいという親心(?)により、白新の優勝ということに。夏の大会の白新は東の横綱としてのぞんだことになる。
 いずれにせよ、夢の対決続出の春季関東大会だったことだろう。