水島ワールドでの千葉県

 千葉県の位置づけ
 明訓は神奈川の高校なので、舞台は主に神奈川県になり、千葉県はライバル県ということになる。『ドカベン』連載の頃の千葉は黄金期で、銚子商や習志野が全国制覇をしたり、常に上位に顔を出していたため、かなりの強豪県として描かれている。関東大会ではいつも有力校が主人公たちを苦しめていることからもそれがわかる。

 何といってもクリーンハイスクール
 千葉で一番インパクトがあるのは、何といってもクリーンハイスクールだ。1年秋の関東大会での最大のライバル校で、投の影丸、打のフォアマンと投打の軸がシッカリしたチームで、明訓にも3点差で9回裏2死であと1球まで迫っており、また『ドカベン』では最も長い延長戦(13回)となった試合でもある。
 学校は新設校で、まだほとんどの部が活動しておらず、野球部だけ先行して活気に満ちている状況。夏に全国制覇した明訓から徳川監督を招き、センバツ甲子園を狙ったが、あと一歩でそれは叶わなかった。しかし学校創立2年目の夏に甲子園を決めており、スピード甲子園記録となっている。甲子園では白星も挙げている。
 しかし活躍はここまでで、2年秋には県大会準決勝で敗れ、3年夏は決勝で負けて、結局甲子園には一度しか出場できずに終わっている。
 余談だが、3年夏は剣道部に転部した影丸がインターハイで全国制覇を果たしている。影丸は7月下旬まで野球をやっていたので、インターハイの千葉予選には出ていないので、クリーンは剣道でも相当の強豪で、全国切符を手に入れ、その後影丸を加えて全国制覇したということになる。

 クリーンを倒した中山畜産
 明訓は2年秋の関東大会で激闘を繰り広げた中山畜産も忘れられないチーム。中山農機代表取締役の中山社長が校長・野球部監督も兼ねており、豊臣教頭の長男が4番でチームの主軸。長身エースの脇坂、本格派・新山、キャプテン・山嵐、補欠ながら活躍した綱吉など、かなり魅力的なチームだ。
 直前の千葉大会準決勝で千葉に君臨する夏の代表校・クリーンを下したことが特筆される。台風が接近する強風の中、運も味方したようだが、脇坂の好投は強打のクリーン打線を抑え込み、フォアマンとのクロスプレーでは身を挺して得点を許さなかった豊臣の好プレーもあった。
 関東大会の明訓戦では延長の熱戦となるものの、明訓の長打攻勢に屈し初戦敗退となるが、他の強豪校とも対戦させてみたいチームだった。
 結局、主軸の豊臣が千葉大会準決勝で負傷し、それが関東大会で悪化し、事実上再起不能に近い大ケガ。このため、これ以降は上位に顔を出すことはなかった。

 その他のチーム
 意外にもその他にも千葉からはいくつかのチームが登場するが、いずれも雑魚キャラだ。登場順に紹介すると、まずは千葉三高。実際にも過去に存在した校名だが、1年夏の代表校で、初戦で準優勝したいわき東に0−1で負けている。当時の千葉には珍しい縦縞のユニフォームのチームだった。
 夏の大会のクリーンハイスクールに影丸やフォアマンがいたのかは不明だが、フォアマンは獲得したばかりの印象だったので夏にはいなかったのかもしれない。影丸は野球を始めて日が浅かったので、少なくとも千葉三高には勝てなかったということだろう。
 続いて、1年秋の関東大会に出た黒潮。当初は銚子黒潮とも呼ばれていたので、モデルは銚子商だろう。秋の千葉大会の準優勝チームで、なぜか関東大会での同じ千葉のクリーンと対戦し、大敗してしまった。また言葉だけだが、銚子商もクリーンに負けた高校として登場している。
 2年秋に登場している青田商。関東大会では東郷学園を相手に序盤優勢に試合を進めるも、逆転負けを喫してしまう。

 『球道くん』
 最後に『球道くん』に触れないわけにはいかないだろう。『ドカベン』は、最後の夏のみ『大甲子園』として他の水島作品に登場する主人公たちと夢の共演を果たす。『大甲子園』で明訓最大のライバルとして登場するのが中西球道率いる青田高校だ。『球道くん』の主人公である。そしてその舞台が千葉なのである。正史でない作品の扱いについては「はじめに」で触れたが、出来る範囲で使用したい。このコーナーを「水島ワールド」として所以である。
 例えば『球道くん』でのライバル校、桜ヶ丘高校や左倉、犬吠商、雲の巣などは同列に扱っても差し障りはないと思うが、2年センバツで初戦敗退した千葉興南となると扱いに困ってしまう。『ドカベン』では千葉興南はセンバツに出ていないことがハッキリしているし、前年秋の関東大会にも出ていないからだ。従って、桜ヶ丘は問題なく扱えるが、千葉興南は参考程度にと、チームによって取り扱いが様々となる。