明訓の最強世代
5季連続の甲子園出場を果たし、うち4回の優勝を誇る明訓の世代別の最強を考えてみようという企画。山田世代の同一人物の比較が多くなってしまいそうだが、やってみよう。 まず、右に各世代の特徴や戦績をまとめてみた。結局のところ、どの世代も主力は山田、岩鬼、里中、殿馬であり、これに多少のプラスマイナスがあるということだ。 山田ら4人はどの世代にも共通しているが、実力は同じとすると3年間まったく成長していないということになってしまうので、当然ながら実力の順に3年、2年、1年となる。この主力4人の力により、チーム全体の力も最強が岩鬼世代、次が山岡世代、一番弱いのが土井垣世代になる、と考えるのは早計だ。各世代それぞれに強みと弱みがあり、単純に4人だけの実力で決まるものでもないので、そのあたりを詳しく見てみよう。
攻撃力
ただし、これがレギュラー9人のみで見ればまた少し違ってくる。 さて、この3世代の打線で一番攻撃力があるのはどの世代だろう。山田、岩鬼、里中、殿馬の4人の実力が3年時が一番であるから、1番、2番打者については3年時が最強ということになる。 クリーンアップ・3番打者はどうだろう。1、2年は山岡なので、2年時の方が上。山岡と里中の打撃力の比較はどうだろう。両者とも長打力もある好打者だが、好機にはそれほど強くない印象。里中はたまに本塁打を打つが、意外にも山岡も結構打っているので互角。ここは里中には投手としての負担がある分だけ山岡が上として、2年時、3年時、1年時の順としておこう。 4番の比較は3年の山田が最強なのは議論を待たない。問題は1年時の土井垣と2年時の山田はどちらが上か、という点。試合内容のみ見ると山田の方が上だが、土井垣は、山田らの入学当初に練習で里中をメッタ打ちにしている(翌年の弁慶戦の前にも再びメッタ打ちにしている)し、注目の4番でキャプテンというマークされる中での打撃だということも考えると、2年の山田よりは上とすべきだ。 5番打者は、1年の山田と3年の微笑の比較になる。微笑は登場してしばらくは強打者らしい活躍をしていたが、3年の頃は雑魚キャラに近い存在になってしまっていた一方、山田は1年時からキーマンとして活躍していたので、1年の山田が最強。 下位打線の6番〜8番は甲乙つけがたいが、1年時の北は通天閣戦で決勝打を放っているのが光る。2年時もセンバツまでは活躍していたが、足の捻挫で夏は不出場なのが痛かった。北の分だけ1年時が良く、2年時と3年時の比較は学年が上の分だけ2年時が優勢。 9番打者は、香車の足は捨て難いが出塁率が低すぎるので、2年時の里中が最強。続いて1年時。 控えは2年時が最も充実していて、他はかなり低い。意外にも明訓の選手層は厚くない。 こうして見ると、2年時は最も充実した攻撃力を誇り、1年時と3年時はやや3年時かという程度にしか変わらないという結果となる。 1年時の魅力は土井垣と山田の2主砲があること。2年時の魅力は上位から下位まで切れ目がないこと。3年時は上位打線は強力だが、反面下位打線は一番低い。
次に投手力を見てみる。もちろん基本は里中で、学年とともに実力もアップすると考える。 明訓の場合、ほとんどエースの里中一人で投げているが、比較的故障がちだったため、その場合のみ他の投手が登板する。里中が万全で継投策をとるのはかなり稀だ。そのため里中が先発・完投している試合が圧倒的に多く、里中の能力がほぼ明訓の投手力と言っても良いことになる。 しかしそれではつまらないので、少しそれ以外の投手も見てみよう。まずは同学年の岩鬼だ。スピードは相当にあり奪三振も多いものの、それ以上にノーコンなので、与四死球が圧倒的に多い。すぐに自滅してしまう場合もあるが、意外と長いイニングを抑える場合もある。1年時は旧エースの大川を抑えて、2番手投手の座についていた。 2年になると渚が2番手となり、岩鬼の登板はほとんどなくなった。渚入学前の新チーム後の最初の秋季県大会では里中復帰までは岩鬼が主戦投手となるが、白新戦での主戦は殿馬となり、その後の登板はない。白新戦での活躍で3番手は殿馬の印象の方が強い。ちなみにこの試合では山田も打者1人(不知火)だけ投げている。また、センバツ決勝では登板はなかったものの今川が準備をしていているので投手が出来ることが分かる。 3年時は里中と渚の2枚看板とまではいかないが、秋季関東大会決勝やセンバツ2回戦を投げ、夏の県大会は大半を渚が投げる等、活躍している。 この比較は、明らかに1年時は落ちる。実力、コマ数とも最低だ。2年時が一番顔ぶれは豊富だが、やはり実力では3年時に軍配が上がるだろう。
守備力でも意外と層が薄いことが露呈してしまう。 まず不動の守備位置は投手、捕手、二塁手、三塁手の4ポジション。それ以外で色々変わっている。 1年時の一塁手は、本来捕手の土井垣が山田にポジションを奪われ入る形に。通天閣戦では痛いエラーをしている。2年時は途中入部の仲根、3年は上下。3人とも甲乙つけ難いが、土井垣はプロ野球に進むほどなので守備もそれなりには上手いだろうと思う。 遊撃手は石毛で決まりで、エラーもなく無難にこなしている。明らかに高代よりは上だろう。 左翼手の沢田も無難にこなしているが、微笑の方がやや上か。本職が捕手なので、外野手としては未知数だが、元来実力者だ。 中堅手は山岡で決まりだ。徳川監督曰く「塀際の魔術師」。一度痛いエラーがあったが、3年時の渚、香車よりは上だろう。 右翼手は蛸田だろう。北や今川も守備で活躍した描写はないが、唯一蛸田がトリックプレーで甲子園を沸かせたからだ。 控えを見るといかにも層が薄い。捕手は1年時は土井垣がいるが、里中との相性は悪い。従って1年時に山田が捕手を出来ない事態になった場合、明訓はほとんど勝ち目がない。2年時の微笑は捕手としての高い能力を示していたが、捕手とのしての機会がほとんどなくなった3年時は恐らく実力は落ちていたことだろう。その証拠に甲子園ではあ1試合岩鬼が捕手をしている。 内野の控えは、1年時は東口や北がいるがどちらも平凡なレベル。高代や目黒も役不足で明らかにコマ不足。 外野は1年時の関谷はいまいちだが、その後の北や香車は無難に守っている。香車は足が速いので外野手として活躍できる。また登板しない時に里中が外野に入る場合がある。 結局、3年時が2年時をやや上回って強いと言える。
その他
よく甲子園前に各校の戦力分析の記事が新聞や雑誌に載るが、そんな雰囲気でABCと特に優れているものにS評価をする4段階で評価するとこんな感じだろうか。1年時の投手力の「B」は低いという指摘もありそうだが、それは全国制覇をした後の結果論であって、甲子園大会前なら「C」評価でもおかしくない。いくら県大会決勝で完全試合をしたとはいえ、1年生に頼りきりで控えもいない。1年時の攻撃力は土井垣がいるので「A」評価だが、これも大会前なら「B」評価かもしれない。土井垣のワンマンチームにまあまあの1年生がいるという程度。甲子園後なら長距離打者を2人擁するということで、他とはひときわ違った明訓打線として肩を並べられると思うが、結局土井垣以外の主軸は山田ら1年生なので、2年時、3年時には及ばない。 こうしてみると、一番バランスのとれた好チームだったのは2年時だということになる。甲子園で唯一の黒星を喫した世代が最強というのも少し違和感があるが、最も充実していたという意味では納得いく気もする。センバツでの土佐丸戦や県大会での白新戦、横浜学院戦などを見ると相当の戦力だと感じる。 結局、3年時は、山岡らの抜けた穴を埋めきれなかったと理解すべきだろう。特に不動の3番・山岡と不動のショートストップ・石毛の存在は大きく、この2人を上回る選手は最後まで現われなかったということになる。 |