主人公たち以外の対決

対戦 勝利校 敗北校
2年春選抜 土佐丸 赤城山
2年夏甲子園 弁 慶 土佐丸
2年夏甲子園 通天閣 弁 慶
2年夏甲子園 通天閣 甲府学院
2年秋神奈川 東郷学園 横浜学院
2年秋岩手 花 巻 弁 慶
2年秋千葉 中山畜産 クリーン
2年秋関東 下 尾 江川学院
2年秋関東 下 尾 東郷学園
3年夏千葉 青 田 クリーン
3年夏甲子園 南 波
 ライバル校同士の対決
 明訓と対戦した幾多のライバルたち。そのライバル校同士の対決は好勝負が多く、個人的には『ドカベン』もう一つの見どころといった捉え方をしていた。ここで振り返ってみたい。
 最初のうちはあまりない。次々にライバル校が登場しては明訓と対戦する構図だ。2年夏になると充分にライバル校が増え、ライバル校同士の対決が見られるようになる。

 実力のインフレーション
 『ドカベン』に限らず漫画等でやくるパターンとして、すでに確立しているキャラクターを、それを崩さずに他のキャラと対決させた際、どうしても古い方が新しい方に負けることが多くなる。それは「あの強かった○○よりもっと強い相手が現われた」ということで「主人公たちは勝てるのだろうか?」という興味を持たせるためだ。これが多すぎる場合、主人公の実力の伸び・成長が際限なく高まり、作品内で実力のインフレーションが起き、物語の終盤には、序盤に現われた強敵がスッカリ雑魚キャラと化してしまうパターンが見受けられる。
 その点、『ドカベン』においては、その辺はうまく描かれていると思う。

 例えば、終盤に新たな強敵と登場した東郷学園が、その実力を見せつけた横浜学院戦。しかしこれは「横浜学院以上のライバル」というものではなく、明訓と対戦した横浜学院には土門がいて、「それに代わって現われた新ライバル」という位置付けだった。
 中山畜産と強豪・クリーンの一戦は台風による強風で影丸が本来の力を発揮できず、フォアマンは中山畜産の中心である豊臣と相討ちで、「クリーン以上の強敵」という感じではなかった。普通の状態で戦えばクリーンが勝ったのではないかと思わせる。(当の影丸が中山畜産の実力を「フロックではない」と評しているが)
 下尾も強打の仁に注目が集まったが、江川学院の中、東郷学園の小林はともに仁を抑えており、決して「中は弱かった」「小林は弱かった」という印象を与えないようになっていた。

 唯一、新キャラが旧キャラが圧倒した扱いになっているのが、弁慶-土佐丸戦だ。それまで「謎のチーム」「不気味なチーム」の代名詞だった土佐丸が、新たな「謎のチーム」「不気味なチーム」の弁慶に負けてしまうのはインパクトがあった。この試合、土佐丸は犬神が新たに強力なフォークボールを投げ、以前にも増して凄みがあったが、これまでに見せていた重々しさは消えて普通の強いチームと化していた。対する弁慶は、これまで土佐丸のイメージだった神秘のベールを纏い、過去最強のライバルを倒してしまい、その強さを示すのだった。
 もっとも、試合内容を見ると弁慶は武蔵坊の本塁打のわずか1安打のみで勝利を収め、犬神は充分に実力を発揮したといえるものだが。この場合も決して「土佐丸は弱かった」という印象は与えていない。

 描かれなかった対決
 2年夏の赤城山、クリーン、江川学院はその後、どこかで負けたはずだが描かれていない。3年夏も白新-東郷学園、青田-江川学院、紫義塾-花巻等、注目の一戦があったはずだが謎のまま。これについては「2年夏の謎」に詳しく書いた。
 また、それ以外にも春の関東大会(2年時、3年時)、国体、神宮大会は無視されているが、ここでも多くの注目の一戦があったと思われる。